昨年度から日出学園小学校で教えられている中野浩太郎先生。2年目となる今年度は、5年生の担任をされています。
1月29日、先生がご担当される5年生社会科の授業を取材させていただきました。また、先生に事前に質問にお答えいただきましたので、併せてご紹介いたします。
今回の授業の単元は「データでマーケティングせよ!貸出数ゼロ」です。
日出学園小学校の図書館は多くの蔵書を有していますが、児童に人気の本がある一方で、まだ一度も貸し出されていない本が2000冊ほどあるそうです。人気の本の傾向を掴み、まだ貸し出されていない本の中から人気の出そうな本を探し、一回でも借りてもらえるようプロデュースする、というとても興味深い内容でした。
この日の授業では、予めリストアップされた人気の本20冊について「大きさ」「ページ数」「対象年齢」「出版年」「面白さ」の5つの班に分かれ、データ分析をしました。
たとえば「大きさ」班では、20冊すべての本の大きさを調べ、数値をシートに記入します。結構な作業量ではありますが、子どもたちはタブレット端末を駆使してどんどん進めていきます。班内で声を掛け合い、協力して作業していました。
データシートが完成したら、そこから人気の本にはどんな傾向があるのか読み取り、それはなぜなのかを考え、班で話し合います。
中野先生は子どもたちからの質問に答えながら、各班を巡回していきます。
「大きさ」や「ページ数」班は数値をそのまま計算に使えますが、「対象年齢」は小学校中学年→実際の年齢に読み替えるなど工夫が必要です。先生からのアドバイスを受け、活発な意見のやりとりは続きました。
授業の最後には、本日の成果の発表です。「大きさはランドセルに入るサイズ」「借りられている回数と面白さの評価には比例の関係が見られる」など、興味深い傾向が示されました。
この傾向を踏まえて、どんな一冊が選ばれるのでしょうか。今後の授業の行方がとても気になりました。図書館の本という身近な題材を取り扱っているためか、データ分析という一見難しそうな課題でも、子どもたちがとても楽しそうに熱心に取り組んでいる姿が印象的でした。
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取材に先立ちまして、中野先生に質問にお答えいただきました。
Q1 先生のご経歴を簡単に教えてください。
小学校4年生より、父の転勤に伴いケニア・ナイロビに1年半居住しました。現地の日本人学校に通いながら、アフリカの人々から見た日本人という視点に触れ、世界が広がったような感覚になったことを覚えています。
中学校で弓道、高校ではアメリカンフットボールの部活動に打ち込み、当時は勉強よりも、体を動かすことに楽しさを感じていました。大学では商学を専攻する傍ら、教員になるための勉強で社会科を選択し、縁があって日出学園にお世話になることになり、今に至ります。
Q2 先生になりたいと思われたのはいつ頃できっかけを教えてください。
高校の時に所属したアメリカンフットボール部では、2年生の時に1年生の後輩とペアを組み、卒業まで一緒に歩むという取り組みがありました。その時になったペアが、家では幼い妹の面倒を見ながら遅刻ギリギリで学校に来て、部活にも気まぐれで入ったと公言するほど、生活面で難しさを抱えている子でした。
しかし、来る日も来る日も一緒に汗を流し、帰りの電車でその日のプレーの良かった点、悪かった点をLINEで送り、時には親からもらったお小遣いでカッコを付けて夕飯をおごるなんてことをしていくうちに、ある日彼は部活があるから学校にくるのが楽しいと言ってくれました。そして、これまで自分の上達にしか興味がなかった自分が、いつしか後輩のプレーをいつも目で追っていることに気が付きました。その時、後輩が他人に興味の無かった自分を変えて、育ててくれたことに気づき、教員という職業を目指すようになりました。
医学生として立派になった彼は、今でも会ったときには私の事を気遣ってくれるよき後輩でもあり、原点を思い出させてくれるよき先生です。
Q3 先生が小学生の頃はどんな子どもでしたか、また熱中していたことはありますか?
曲がったことが許せず、杓子定規で物事を見るような子どもだったと思います。友人のちょっとしたおふざけにも真正面から対立するにもかかわらず、どちらかと言えば繊細で、傷つきやすい気難しい子どもでした。理科が大好きで、学校で廃棄されることになった古い望遠鏡を先生に頼んで持って帰り、星や月の写真を撮ったりしていました。ケニアに住んでいた時に、日本ではほとんど見えないみなみじゅうじ座を見つけた時の興奮を、今でも覚えています。
Q4 日出学園小学校で教えられるようになった経緯を教えてください。
もともと中学校からの友人に日出学園の出身者が何人かいて、どの学校で教壇に立つかを決めかねていた際に相談したことがありました。その中で、子どもたちと先生の距離が近く、のびのびとした雰囲気として紹介いただいた日出学園で、ぜひとも先生をやりたいと思うようになったのがきっかけです。
Q5 先生をしていて、良かった、また嬉しかったのはどんなことですか?
昨年度、副担任をしていた6年生たちが、時々顔を出してくれることがあります。彼らが話してくれる新しい環境での活躍から、卒業後の成長を知ることができ、とてもうれしく思います。先生と生徒として一緒に過ごす時間は短いですが、その後の成長を見届けることができるのが今後の何よりの楽しみです。
Q6 子どもたちに社会科に興味を持ってもらうために心がけているのは、どのようなことですか?
子どもたちにとって何か遠い所で起きていることのように思いがちな「社会」を身近に感じてもらうために、扱う題材はできるだけ生活に近い事柄を選ぶようにしています。ご家庭で食べている食材の産地を調べたり、身の回りの物を工業製品ごとに分類したりと、保護者の方々へご協力いただくことも多く、温かいご支援に助けられています。
Q7 社会科が苦手な子にアドバイスをいただけますか?
社会科は覚えることが沢山あり、暗記科目のようにとらえられがちですが、実は自分の生活に密着していることも多いです。スーパーでの買い物一つとっても、食材の産地を知る手掛かりになりますし、商品の配置の仕方の工夫にも目を向けると、商業の学習にもつながってきます。勉強として堅苦しく構えず、日ごろ目にする情報を社会科で学習した内容と関連付けることを意識するだけでも、日々の生活がちょっと面白くなるかもしれません。
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社会科に興味を持つきっかけとして、毎日の生活の中で体験できることがたくさんありそうです。家庭でも楽しみながら社会に触れる機会を作りたいと思いました。先生の生い立ちから、自分を変えてくれた後輩とのエピソードも、素敵なお話をとてもわかりやすく丁寧にお答えいただきました。
お忙しいなか取材にご協力いただきました中野先生、そして5年2組のみなさん、ありがとうございました。